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「まだ?」「先にやりたい」と何度も言われると、出かける前やきょうだい・友だちとの遊びで、保護者も気持ちが急かされます。順番を待てない姿を「わがまま」と決めつけず、待つ間に起こる悔しさや不安を物語で扱うと、親子で話す入口をつくれます。
7〜8歳には、「待ちなさい」を教えるためだけの絵本よりも、怒り、負けたくなさ、思いどおりにならない気持ちを少し離れた主人公に重ねられる作品が向きます。今回の候補には対象年齢が未確認、または年下向けの表記の作品もあるため、立ち読みや試し読みで、今の子が絵や言葉に入り込めそうか確かめてから選びましょう。
「待てない」の前にある気持ちを見つける
順番を待つ場面で困る理由は、一つとは限りません。
たとえば、ゲームで負けそうで焦る子もいれば、「自分の番が来ないかも」と不安になる子、待っている間に退屈や怒りが大きくなる子もいます。まずは、行動を止めることだけを目標にせず、「いま、何がつらいのかな」と見立てるところから始めます。
絵本を使う際も、読後に「どう思った?」「反省した?」と答えを求める必要はありません。主人公の気持ちを話題にしながら、家庭の待つ場面へ小さくつなげれば十分です。
声かけは、短く具体的にします。
- 「先にやりたかったんだね」
- 「待っていると、だんだんいやになったね」
- 「次はどこで待ちやすくできそう?」
- 「今はお母さんと一緒に順番を確認しよう」
「待てたらえらい」と評価するより、「待っている間、どう過ごすか」を親子で考えるほうが、次の場面で使いやすくなります。
7〜8歳の絵本は「教訓」より物語への入りやすさで選ぶ
この年齢では、幼い子向けに見える絵本を嫌がることもあります。一方で、短い絵本だからこそ、疲れている日や気持ちが荒れている日にも読み始めやすい場合があります。
選ぶときは、次の3点を見ます。
1. 本人が「自分のこと」と感じすぎないか
待つ練習をさせる目的が前面に出ると、読むこと自体を拒みやすくなります。主人公の出来事として楽しめる作品を選びます。
2. 気持ちの変化が描かれているか
怒りや負けた悔しさが出てきても、それだけで終わらず、気持ちを見つめ直せる流れがあるかを確認します。
3. 読み終えた後に一言で終えられるか
長い話し合いは不要です。「この場面、すごい顔だね」「今日はここまでにしよう」と閉じてもかまいません。
順番待ちの困りごとに選びたい3冊
かっても まけても いいんだよ ガストンのソーシャルスキルえほん(Kindle版)
勝っても負けても大丈夫というテーマを扱う、子ども自身で感情をコントロールするスキルを教えるシリーズの第1弾です。順番を待てない背景に「負けたくない」「自分だけ損をしたくない」という思いが見えるときに、手に取りやすい候補です。
読み終えた後は、対戦や順位をつける遊びを増やす必要はありません。「勝つとき」「負けるとき」ではなく、「待っているときの気持ちはどんな色かな」と、絵本の外で気持ちに名前をつける遊び方ができます。
良い点は、順番待ちを直接しつける形にせず、勝敗に伴う感情から考えられることです。対象年齢は4歳〜と表記されているため、7〜8歳には内容がやさしく感じられる可能性があります。Kindle版なので、購入前に見られる範囲で絵や言葉の合い方を確かめると安心です。感想を無理に聞き出す必要はありません。
かいじゅうたちのいるところ(冨山房)
怒りで部屋に閉じ込められた主人公が、心の中の冒険を経て戻ってくる、モーリス・センダックの物語です。「順番じゃない」「今すぐ」と怒りが大きくなったあとに、気持ちを落ち着ける時間が必要な子に合いやすいでしょう。
遊び方は、読みながら「この子は今、待てる気分かな」「怒っているとき、体はどうなりそうかな」と、正解を決めずに想像することです。家庭では、順番待ちの前に「待つのがいやになったら、大人の近くに来る」と約束するきっかけにもできます。
怒った気持ちを持つこと自体を悪いものとして扱わずに読める点が良さです。一方、メーカーの対象年齢表記は確認できません。紙の本であり、Kindle版はAmazonで見つからなかったとされています。物語の雰囲気や絵の迫力が、その子に合うかを確認して選びましょう。
ラチとらいおん(福音館書店)
弱虫の男の子が、小さなライオンと一緒に少しずつ強くなる物語です。順番を待つ場面で強い口調になったり、押しのけたりしてしまう子が、「本当は不安なのかもしれない」と感じられる場合に候補になります。
読み終えたら、「強くなるなら何をする?」と大きな課題にせず、「次に待つときの小さなライオン役は何だろう」と考えます。たとえば、手を握る、待つ場所を決める、大人に「あとどれくらい?」と尋ねるなど、その子が選べる一つに絞ります。
主人公の変化を通して、自分の弱さや怖さを話題にしやすい点が良いところです。ただし、「強くなりなさい」という励ましに読めないよう注意が必要です。対象年齢は未確認で、紙の本です。読み聞かせの後に感想を求めず、物語を楽しんで終える日があっても問題ありません。
3冊の違いを家庭の場面に合わせて見る
| 絵本 | 対象年齢の表記 | 読み方・形式 | 合いやすい場面 | 親の関わり |
|---|---|---|---|---|
| かっても まけても いいんだよ ガストンのソーシャルスキルえほん(Kindle版) | 4歳〜 | 読み聞かせ・Kindle版 | 負けることや交代に悔しさが出る | 勝敗より、待つ間の気持ちに目を向ける |
| かいじゅうたちのいるところ(冨山房) | 未確認 | 読み聞かせ・紙の本 | 怒りが大きくなり、切り替えに時間がかかる | 怒りを責めず、主人公の気持ちを想像する |
| ラチとらいおん(福音館書店) | 未確認 | 読み聞かせ・紙の本 | 不安を隠すように強く出てしまう | 「強くなる」評価にせず、小さな工夫を探す |
3冊はいずれも、競争の方法や順番のルールを詳しく教える本として確認されているわけではありません。順番待ちの練習帳として選ぶより、気持ちの整理を助ける読み物として使う家庭に向きます。
反対に、子どもが「今は絵本の話をしたくない」と明確に言うとき、待つ場面で安全面の心配が大きいときは、読書で解決しようと急がないほうがよいでしょう。その日は絵本を閉じ、待つ時間を短くできる工夫を優先します。
読んだあとに試す「待つ間」の小さな約束
順番待ちは、いきなり長時間できるように目指す必要はありません。家庭なら、短く終わる場面で一つだけ試します。
たとえば、きょうだいで使う物を決めるときは、「先に使う人」と「待っている人」を見えるように確認します。そして待つ子には、待ち方を選ばせます。
- 隣で見ている
- 別のおもちゃを一つ選ぶ
- 大人に次の順番を聞く
- いやになったら「交代まだ?」と一回だけ言う
できなかったときも、「ほら、待てなかった」と絵本を持ち出さないことが大切です。「待つのは難しかったね。次は待つ場所を変えよう」と、環境や約束を調整します。
うまくいかないときは、読む量と目標を減らす
絵本を読んでも、翌日にすぐ順番を待てるようになるとは限りません。読んでいる最中にふざける、ページを飛ばす、主人公をからかうような反応があっても、それだけで選択が失敗とはいえません。
「全部読む」「感想を言う」「待てるようになる」を一度に求めず、次のように変えてみます。
- 途中までで終える
- 寝る前ではなく、落ち着いている時間に読む
- 順番待ちで困った直後は避け、別の日に読む
- 親が一人で読んでから、使えそうな言葉だけ取り入れる
保護者が疲れている日は、「今日は順番の話をしないで読もう」でも大丈夫です。親子の会話を増やすための絵本が、親子を追い込む課題にならないように選びましょう。
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