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「何が嫌だったの?」と聞いても黙り込む、泣いたり怒ったりしてしまい、言葉が出てこない。学校や園でがんばっているように見えるぶん、家での荒れ方に戸惑うこともあるでしょう。保護者自身も、急かしてはいけないと思いながら、どう支えればよいのか迷い、疲れてしまうものです。
気持ちを言葉にできないことは、親子の努力不足と決めつけられるものではありません。6歳ごろは、感じたことを少しずつ言葉にし、相手との違いにも気づいていく途中です。絵本は「自分のことを話す」前に、登場人物の気持ちを眺められる道具の一つになります。
6歳の「言えない」を、すぐに直そうとしない
気持ちを表せないとき、子どもの中には怒り、悔しさ、恥ずかしさ、不安、疲れなど、いくつもの感情が重なっていることがあります。しかし、その場ですべてを説明するのは大人にも難しいことです。
絵本を読む時間は、答えを出す時間ではなく、気持ちに名前をつける練習をゆるやかに始める時間にできます。たとえば、主人公を主語にして「この子、どんな顔かな」と見るだけでも十分です。
心理の観点では、登場人物との距離があることで、自分の出来事を直接話さずに気持ちへ触れやすくなる場合があります。発達支援の観点では、絵や短い言葉を手がかりに、感情語を増やすきっかけになり得ます。教育・保育の観点では、「正しい気持ち」を教えるより、いろいろな感じ方があると知る対話の素材として扱えます。
選ぶときは「今の困り方」と絵本の距離を見ます
6歳に選ぶなら、対象年齢だけでなく、今の子どもが入りやすい入口を見ましょう。
- 感情の名前がまだ出にくい:表情や自然の変化など、気持ちを見立てる絵本
- 怒りとして出やすい:怒りの奥にある気持ちを扱う絵本
- 誤解されたと感じてつらそう:子どもの内面が丁寧に描かれた物語
- 物語に没頭するほうが安心する:冒険や空想を通じて気持ちを描く作品
読み聞かせでは、「何を学んだ?」「どう思った?」と感想を求めなくてもかまいません。ページを閉じたあとに別の遊びを始める、もう一度好きな場面だけ読む、といった過ごし方も自然な反応です。
6歳から取り入れやすい絵本3選
きもちのくも(Kindle版・こどもの時間舎)
合いやすい場面は、「嫌だった」以外の言葉がなかなか出ないときや、話す前に絵を見て落ち着きたいときです。子ども自身の出来事に結びつけず、「今日はどんな雲があるかな」と空や絵本のページを眺めるところから始められます。
遊び方は、気に入った雲を指さす、紙に今の雲を描く、保護者も自分の雲を一つ選ぶ、という程度で十分です。
良い点は、感情を直接説明できないときにも、雲という比喩を使って表し方を探せることです。
注意点は、Kindle版であり、レビューがまだない新しい絵本とされていることです。購入前に立ち読みで画面の見え方や内容を確認しましょう。
おこだでませんように(Kindle版・小学館)
合いやすい場面は、子どもが注意されたあとに強く反発する、事情を聞く前に「また怒られる」と身構えているように見えるときです。子どもに反省を促すためではなく、大人が子どもの見え方を想像するために読むこともできます。
遊び方としては、読み終えたあとに「この子は、言いたかったことがあったのかもしれないね」と一言だけ添えます。子どもが話さなければ、そのまま終えて大丈夫です。
良い点は、行動だけではわかりにくい子どもの内側へ、保護者が目を向けるきっかけを持てることです。
注意点は、Kindle版で、端末によっては一部読みづらい場合があると案内されている点です。立ち読みで文字や絵の見やすさを確認してください。
かいじゅうたちのいるところ(冨山房)
合いやすい場面は、怒りが大きくなりやすい子、気持ちを言葉ではなく空想や体の動きで表しやすい子です。6歳には、怪獣の表情や主人公の行動をじっくり追いながら読めるでしょう。
遊び方は、「怪獣たちは怖そう? 楽しそう?」と絵を見て選ぶことです。新聞紙やクッションで安全な範囲の「怪獣の踊り」をしてから、ゆっくり座る遊びにしてもよいでしょう。
良い点は、怒りや荒々しさを「なくすべきもの」とせず、物語の中で眺められることです。
注意点は、Kindle版はAmazonで見つからなかったとされ、紙の本で読む作品であることです。また、読後に感想を無理に聞き出す必要はありません。
3冊の比較と、家庭に合う選び方
| 絵本 | 対象年齢表記 | 人数・形式 | 遊び方の軸 | 競争/協力 | 保護者の関わり |
|---|---|---|---|---|---|
| きもちのくも(Kindle版・こどもの時間舎) | 3〜7歳くらい | 読み聞かせ・Kindle版 | 雲を選ぶ、描く | 競争なし。並んで眺める | 感情語を押しつけず、選択肢を置く |
| おこだでませんように(Kindle版・小学館) | 未確認 | 読み聞かせ・Kindle版 | 主人公の気持ちを想像する | 競争なし。共感を共有する | 子どもを評価せず、大人の受け止めを整える |
| かいじゅうたちのいるところ(冨山房) | 未確認 | 読み聞かせ・紙の本 | 絵を見る、体で表す | 競争なし。親子で表現を楽しむ | 感想よりも、安心して終えることを優先する |
感情の言葉を増やす入口なら『きもちのくも』、保護者が「叱られる側の気持ち」を考え直したいなら『おこだでませんように』、言葉より物語や空想に入りやすい子には『かいじゅうたちのいるところ』が選択肢になります。
声かけは「答え合わせ」ではなく、選べる形に
読み聞かせ中や日常では、説明を求める質問を減らし、子どもがうなずきや指さしでも答えられる言葉を使います。
- 「この雲は、しんぱいの雲かな。かなしい雲かな」
- 「話したくなったら聞くよ。今は話さなくても大丈夫」
- 「怒っていたんだね。ほかにも何かあったかな」
- 「あの子みたいに、わかってほしい気持ちがあるのかな」
- 「言葉じゃなくて、絵や指さしでもいいよ」
保護者も「今日はちょっと疲れの雲かも」と自分の気持ちを短く示すと、感情を言葉にする見本になります。ただし、子どもに同じ表現を求める必要はありません。
うまくいかないときの調整と、向きにくい場面
読んでいる途中で席を立つ、ふざける、怒ることがあっても、その絵本が合わないと即座に判断しなくて大丈夫です。疲れている時間帯を避ける、一度に最後まで読まず数ページで終える、子どもが選んだページだけ開く、といった調整ができます。
絵本の時間が向きやすいのは、寝る前や帰宅直後など、親子で短く落ち着ける家庭です。きょうだいがいる場合も、全員で感想を発表する形にせず、それぞれが絵を見るだけで参加できる形にすると負担を減らせます。
一方で、強い興奮や混乱の最中、急いで出発しなければならない場面では、読み聞かせを使って気持ちを言わせようとしないほうがよいでしょう。まず安全や休息、水分、距離を確保し、落ち着いた別の時間に絵本へ戻ります。日常生活や集団生活での困りごとが続き、親子だけで抱えにくいと感じる場合は、園・学校の先生や地域の相談窓口などに状況を共有する選択肢もあります。


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